株式公開コンサルティング
1.社長の夢が現実に近づいた年次決算

今日は、担当しているK社の年次決算で大忙し。
決算月の2ヶ月くらい前に先方の経理部の方とこれまでの売上などの数字を元に今年度の着地見込、決算の留意点、スケジュール等の打合せを行う。
作業を進めていると去年の数字と比べてかなり業績も伸びていて、しかも一時的な成長ではなく継続することも予想できることに気づく。「社長の夢の実現も近いかも。」と社長が夢や目標を話してくださった時のことを思い出した。
「担当」
入社して業務に責任を持てるようになってきた頃、自分が担当するお客様が決まります。
お客様の成長とメンバーの成長を考えマネージャーが適材適所を判断しています。
3月決算の担当を持った場合の一年の流れ
| 随時 | 税務に関する相談 |
|---|---|
| 毎月 | お客様の会社へ訪問 |
| 毎月 | 月次決算 |
| 3ヶ月に1度 | 四半期決算 |
| 毎年3月 | 年次決算 |
| 毎年4月 | 申告書の作成 |
| スポット | 相続などの相談や依頼 |
2.頼りになる上司と仲間

お客様も喜んでくれるだろうと思った僕は、マネージャーに決算の報告をするのと同時にK社の株式公開の可能性を話してみることにした。マネージャーも「田渕、社長も喜ぶぞ。決算報告会の時に株式公開コンサルティングの話をしてみようか。」と言ってくれたので、株式公開(IPO)の研究グループで培ったノウハウを基にプレゼン資料を作成することに。
他の事業部の株式公開(IPO)研究グループのメンバーをはじめ、リーダーにも相談をしてみる。「こういうプレゼンも良いよ!」「こういう資料もあるよ。」とみんな積極的に”より良いもの”をとアドバイスをくれる。これは当グループのメンバー全員に共通して言える良いところ。いつも刺激を受ける瞬間だ。
「研究グループ」
最先端な活動を行う研究グループ
当グループでは、事業部で様々な業務を行うのと同時に自分自身で興味を持った専門分野をさらに深く研究し自分の強みを持つ専門家となるべく研究グループを設けています。
くわしくはこちらへ
事業部と研究グループ
研究グループに参加したら事業部には所属しないというわけではなく、事業部に所属しながら研究グループに参加します。その理由は、幅広い業務に携わり、広い視野を持つことで初めて大事なことを見落とすことなく、お客様へ最良のサービスの提供ができるからです。
3.報告そして提案

K社へ決算の報告に出向いた。社長は、決算の数字が見込みを上回る業績の達成を見てうれしい様子。その様子を見て安心した僕は、用意してきたプレゼン資料を出すタイミングを窺っていた。
その時にマネージャーが絶妙なタイミングで「社長、以前仰っていた株式公開の件は、現在どのようにお考えですか。」と切り出したのだ。さすが大村マネージャー。「可能であれば、近い将来に公開したいですね。」と社長がお答えになったので僕は、「株式公開するのが夢と仰っていた社長のお手伝いができればと思い、実は資料を作ってきたのでご覧いただけますか。」と用意していた資料を取り出した。資料の説明の時間をいただけることになった。社長により株式公開をしたいと思っていただけるように、株式公開した際のメリットである
- 多様かつ敏速な資金調達の実現
- 社会信用度の向上
- 強固な社内管理体制の構築
- インセンティブ・プランの実行
- 創業者利潤の獲得
- 事業承継としての利用
などの話を中心に説明を進める。ただし、「それでは1年後に株式公開をしましょう。」と言うことは難しくて、準備するのに2~3年程度は時間を要すること、そして、その準備期間に社内管理体制の強化を図ることは経営者である社長の不断な努力が必要であることもきちんと説明した。
株式公開へのステップ
株式公開までに準備しなければならないことは大きく分けて6段階に分けることができます。この6段階を3年間かけて行います。
- スタート支援(ショートレビューの作成)
- 資本政策の立案
- 事業計画の策定と予算統制
- 内部統制の整備
- 関係会社・特別関係者の整理
- 上場審査資料の作成
4.プロジェクトスタート

数日後、K社の社長からご連絡をいただき、「株式公開の件でスケジュールのご相談をしたい。」と連絡があった。今日は、外出の予定もなかったのでこれから伺うことに。
スケジュールの説明をさせていただいたところで、「公開支援をお願いしたい。」という回答をいただいた。こんなにあっさりお返事がいただけるケースも稀なので驚いたが、社長の夢のお手伝いができることが現実となり、何よりも僕はうれしかった。マネージャーにも報告し、このプロジェクトに関わるメンバーの選出をお願いした。数日後、メンバーが決定し、税理士の先輩だけではなく会計士の先輩たちも参加してくれることになる。一緒に仕事をしてみたいと思っていた先輩方の参加も分かり、いろいろな面で楽しみになってきた。
まず、3年後の株式公開を目標としたスケジュールを組みむためにショートレビューを実施した。実施に伴い、早期の問題に解決すべき課題が見えてくる。課題も見えてきたところで次は資本政策の立案に取り掛かることとなる。
「ショートレビュー」
ショートレビューとは、公開準備会社(ここではK社)がきちんと準備を進められるかどうか、財務諸表の妥当性や内部統制の整備状況に関して調査を受けることです。
ショートレビューの必要性
株式公開の準備を効率的に進めるためには、最初に会社が解決すべき「課題」を洗い出す必要があります。そして、いつまでに何を解決すべきか、優先順位を考慮しながら公開までのスケジュールを立てていきます。
- 会計処理の妥当性
- 内部統制の状況
- 関係会社の整備
- 役員との取引
- 過去の株の移動
5.コンサルティングということ

株式公開までは社内のプロジェクトミーティングを週1回行うことになっている。今回は、資本政策立案の際に行ったK社の株価算定の報告と事業計画の方向性の報告が中心に話が進む。株式公開を目指す会社は上場後も利益を上げ続けなければならないので、経営理念やその会社のビジョンのもと明確な目標値を設定する必要がある。
このようなコンサルティングを行う時に僕たち専門家が一番大事にしなければならないことが一つある。それは僕が入社した当時から周りの先輩が当たり前のように行っているから、自分自身も自然と行っていることだが実は難しいことなのかもしれない。
さて、ここで問題です。「一番大事にしなければならない」ことは何でしょうか。
- 専門家として独立した立場でお客様が作成したものの法律上の妥当性をチェックし、間違っている場合は指摘し、作成し直してもらうように指示すること。
- お客様と同じ目線となり、専門家としてのスキルを活かしながら一緒に手を動かして、目標とするものを作成すること。
だから、今回の事業計画書も「法律にこう書いてあるので」ではなくて、お客様がどのようにしたいかをまず聞くことが大事。その後、どうすればそれが実現可能なのかを全力で専門家として考え、打開策を練るのが僕の役目。専門知識が付いてきたからといって、視野を狭くしては決していけない。
資本政策の主な目的
資本政策は株式公開時の株主構成、資金調達額、インセンティブプタンなどの目標達成に向けてどのような手法により実行していくかを計画した財務戦略です。時間の経過とともに策定の選択肢が減少する可能性があるので準備の早い段階で行う必要があります。
6.内部統制の構築サポート

上場審査では、コーポレートガバナンスがかなり重要視され、重点的に整備することが必要。例えば、役員構成の検討や管理部門の強化、取締役会の運営など。株主総会や取締役会議事録整備などもあり、それぞれの事情に応じた適切な組織作りのためのバックアップをする必要性がある。
今回は、一貫として規程の作成を僕が行うことになった。規程もたくさんあるが、経理規程と原価計算規程を作成した。
実際、現場の方々に現状フローをヒヤリングしながら、改めることを洗い出しそして文書化する。頭で描くことは簡単だけどそれを文書化するとなるとかなり根気がいることだと分かる。実際に作成した通りに行ってみると、無理があったり、漏れがあったり・・・。試行錯誤の繰り返しだ。また、上場企業にはJ-SOX制度の適用が義務付けられているため、上場準備段階からJ-SOXを意識して文書化の作業を進めなければならない。
「コーポレートガバナンス」
企業内部において、違法行為や不正、ミスなどが起こることなく、組織が健全かつ有効・効率的に運営されるよう各業務で所定の基準や手続きを定め、それに基づいて管理などを行うこと。
なぜJ-SOXの適用が義務付けられたのか
2000年代に入り、金融市場における企業の財務情報の信頼性が大きく揺らぐような上場廃止企業が相次いだことがきっかけです。
そこで、財務状況の信頼性回復を目的とした「金融商品取引法」が成立。この法律において上場会社の経営者は財務報告に関する内部統制を整備・運用してその状況を有価証券報告書の中で報告することが求められるようになりました。
7.一番大変なⅠの部、Ⅱの部の作成

K社に毎日のように伺うようになって、2年が経とうとしていた。
上場まであと1年。正念場だ。
今日は、株式公開申請書類について話を進めている。
上場審査上、「Iの部」「Ⅱの部」というものを作成し提出しなければならず、これがかなりの知識と労力を要する。これらの書類は、上場審査の際にこの書類を基にさまざまな質問を受けるので根拠資料の正確性・全ての書類の整合性に十分な注意を払って作成しなければならない。経理部、社長室そして現場の皆さんとやり取りをしながら作業を進めていく。作成してはやり直しの繰り返し。大半はできてきて、ゴールが見えてきた。それが現場の人たちも分かったのか、少し顔が安心されたように感じた。
「もう少しですね。田渕さん。頑張りましょう!」と笑顔で言われ、お客さんとの一体感をその時感じた。
「上場審査」
株式公開をしたいと言って申請したらどの会社もそれを認められるわけではありません。株式を公開する会社として公開市場に迎えても問題ないか審査を受ける必要があります。申請するまでに公開準備会社、私たち専門家、証券会社などが協力し合い、申請書類を作成し提出します。そしてその書類に基づくヒヤリングや面談を通過し初めて株式公開が認められることとなります。
Iの部、IIの部とは?
Iの部
企業情報、特別情報及び公開情報などを記載する書類
IIの部
上場申請の理由、会社設立、労務の状況、事務の組織運営、業界の内容、利益計画等を記載する書類
8.証券取引所へ書類提出

株式公開申請書類を出しに社長室の方と待ち合わせの場所へ向かう。
この2年と数ヶ月一緒に頑張ってきたK社の社長室、経理部の皆さんそして現場の皆さんとのやり取りを思い出した。
確実にK社の社内体制も変わり、いつ上場しても問題ないと言える体制にもなった。
「田渕さんありがとう。」と言われる度に、大変な業務でも頑張ろうと乗り越えることができた。この仕事に就いて本当に良かったと思った。もう少しでこのプロジェクトも終わりだと思うと、少し寂しく思う。
9.上場当日

いよいよ上場当日。K社の社長など関係者の皆さんは証券取引所に行き記者会見とともにセレモニーを行っている。夢が叶った社長はどういう気持ちでいるのだろう。
僕は会社で初値の数字がどうなるか落ち着かない。
パソコンの画面に映し出された瞬間、思わず立ち上がってしまい、隣の席のメンバーがギョッとした顔で僕を見ていた。この瞬間を頭の中では何度も描いていたものの、実際に見ると迫力が違う。
今日でこのコンサルティング業務は終了。
でも、市場の鞍替え支援などK社にお手伝いできることはたくさんある。これからも担当者として末長くサポートして社長の夢の実現のお手伝いをしていきたい。
今日は、プロジェクトメンバーと飲みに行こう。乾杯のビールは絶対に美味しいはずだ!
「初値」
初値とは、株式公開株が新規上場して最初についた株価。
主人公紹介
Standard職
田渕 安春
新卒で平成会計社グループに入社。
その年の税理士試験に合格し、有資格者となる。
株式公開を実現されたお客様に関与できたことについてどうですか。
お客様が上場を果たされたことが率直にとても嬉しかったです。また、入社当時からK社の税務申告や月次・決算等を担当していたので、上場という重要な瞬間に立ちあえたことが光栄でした。
株式公開前と公開後で何か変わったと感じることはありますか。
社員の方々の自信や意識の変化を感じています。上場を実現されたことにより、社員の方々はK社で働くことにより一層誇りを感じられるようになったようです。公開前と比較して、公に見られているという意識からか、社内にほど良い緊張感が生まれ、組織としての一体感が一段と高まったというお話も伺いました。
今後もK社を担当していくにあたり、何かご自身の中で目標はありますか。
専門家として知識や経験を増やしていくのはもちろんのこと、常にお客様と同じ目線で手を動かしながらサービスを提供していきたいです。K社の深い理解に努めながら、発展と成長を全力でサポートしていきます。
皆さんにメッセージをお願いします。
株式公開支援業務は、会計・税務の知識はもちろんのこと、内部統制や会社法等のプラスアルファの知識が必要とされます。大変な部分もありますが、その分やりがいがあり、また成長できる業務です。幅広い知識や経験を積みたいというこころざしの高い方、ぜひ当グループでお客様の株式公開支援を一緒に実現させませんか。